シミュレーションを行い、サージカルガイドを用いた自家歯牙移植
私(先田)が初めて自家歯牙移植というのをトライしたのは、もう20年も前のことですが、当時そのあまりにも汗をかきかきの状態に、『これはもう二度とやらない』とさじを投げておりました。
今は術前にCTによるシミュレーションを行い、また移植窩の形成をサージカルガイドを用いることが可能となり、施術時間は半分、術中ストレスを感じることは、ほぼ無くなりました。
困っておられる患者さんの欠損歯列を見ると、どこかに余っている親不知は無いだろうかという目で自動的にレントゲンを診るようにまでなってきました。
移植後4年と4か月目(2021年9月時点)を迎えるこの症例の方も、定期健診に欠かさずお越しいただき、とても良好な状態を保っていただいております。
治療前の状態です。根の付け根に深い虫歯があります。
根が割れていたので抜かざるを得ませんでした。骨がごそっと溶けて無くなり、大きく窪んでいるのがわかります。
できるだけこれ以上骨を削ることなく移植ができるようシミュレーションを行い、それに基づいて作製されたガイドにて施術を行います。
ガイドに合わせて最小限の形成を行っています。これにより安全、確実、低侵襲で、患者さんのご負担の少ない自家歯牙移植を可能にしています。
事前に作成されたドナー歯(今回は親知らず)と同じ形状、大きさの3Dドナーモデルです。
上記ドナーモデルを移植予定部位に合わせていきます。このように工夫することで、移植の直前まで移植するドナー歯そのものを傷めることがありません。私たちはこのステップを最も重要ととらえ、移植の成功率を上げるように努めています。
移植した親知らずを、歯磨きやかみ合わせに適した理想的な位置へ誘導していきます。インプラントではない、歯根膜をもつ天然歯だからこそできることです。
移植後4年と4か月目(2021年9月時点)経過時のレントゲン写真です。真ん中のごそっと深く窪んでいた骨の部分に、ご自身の歯槽骨がみごとに再生しているのがわかりますね。
もともとそこにあったかのように自然な修復が可能となりました。骨と強固にくっついているので、固いものでも不安なくお食事が出来るようになりました。患者さんには若いころに戻ったようだと、大変喜んでいただきました。
まだまだこれからの症例ですが、またこの場で皆さんに良好な経過をお示しさせていただけますよう、努めてまいります。
※この記事は主として医療従事者向けのインフォメーションとなります。
※これらすべての臨床写真はこのような保存治療の普及のため、患者さんに掲出の同意を得ております。