最後まであきらめないということ
末期的に見える歯はすぐ抜いてインプラントにするという考え方の、すべてがすべて間違いではないと思っています。
ただこの患者さんにとって大切なこの犬歯を救うことにより得られるものが多く、またインプラントにしないことにより回避できるリスクが明らかだと判断、今回はぎりぎりまで抜かずに残すことにいたしました。
噛み合わせにおいて大切な上顎犬歯は、この矯正治療によって患者さんが歯磨きしやすく、また噛む力に耐えられる構造となる位置まで移動、プラークを寄せつけない生体親和性の極めて高いジルコニア製コーヌス内冠を装着する予定でいます。
このような欠損歯列において大切なKEY-WORD、【二次固定効果】という不思議だけれど凄く役に立つ仕組みを活用、奥歯でキチンとお食事が美味しく召し上がれるようなゴールを設定します。弱りつつある手前の前歯に救いの手を差し伸べ、見た目にも10歳若返っていただき、ますます元気で誇らしい人生を生きていただきたいです。(すでに70歳をゆうに超えてらっしゃいます! 2024年6月時点)
一枚のレントゲンから、そんな色々を想いつつ、あらためてじっくり見直すと、
そうだ!これ、一度目は途中でコイルが抜けてしまい、「あちゃー」となりながらも何とかもう一度新たなコイルを設置したんだ!
マイクロスコープの直視下、狭い狭い視野の隙間からこれ以上歯を傷めないようにかつできるだけ深め、そう今度は外れないようにと慎重に汗をかき。
これはそんな私の
【最後まであきらめない】
という想いがたくさん詰まった一枚となります。
※この記事は主として医療従事者向けのインフォメーションとなります。
※これらすべての臨床写真はこのような保存治療の普及のため、患者さんに掲出の同意を得ております。